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ハンモック大特集!すごい流行を巻き起こすかもしれないその理由とは?

ハンモックの最新事情をチェックせよ!

geared ハンモック

ハンモックは近々すごい流行を巻き起こすと思います。その予感は以前にもお伝えしていましたが、各社の来年にかけての商品展開をみるに、いよいよ大きな動きになりそうです。

※geared編集部注: 本稿は土屋智哉さんの談話をもとに、geared編集部が文章化しています。

ハンモックというと、日本ではちょっとしたカフェやフェス会場の一角にスタンドにかけて置いてあるような、ラグジュアリーな雰囲気重視の道具だという印象が強いです。

ハンモックをアウトドアでの実用品として捉えている人は、まだまだ少数派でしょう。一方で、アメリカではハンモックがきわめて実用的な道具として評価され、アウトドアの世界に広まっています。

近年の動向を把握して、こりかたまったハンモック観をアップデートするために、ハンモックに関するさまざまな道具を紹介します。

ハンモック・シェルター小史

ハンモックをアウトドアで使う可能性を革新的に高めたのは、1999年に設立された Hennessy Hammock でしょう。

それまでにもハンモックは軍の放出品を中心にアウトドアで使われてきましたが、同社はタープとバグネットと本体を一体化させたオールインワンのシステムを打ち出し、ハイキングのような野外のアクティヴィティでもハンモックを積極使用できる方向性を明示しました。

日米のULハイカーもこの時期の Hennesy に注目しています。とはいえ、この段階ではハンモックはまだまだマイナーな道具でした。

そんな状況が2000年代後半以降に変化します。アメリカでウルトラライト系メーカーのブームが落ち着いてきたのと入れ替わるように、Hennessy に影響を受けた人たちがインディペンデントなカタチでハンモック関連の道具をつくりはじめたのです。特にハンモックを固定するためのツリーストラップ周辺の工夫には驚くべきものがあり、ハンモックギアの進化はツリーストラップの進化だと言っても過言ではないほど、多くの知恵が蓄積されていきます。

2011年には『The Ultimate Hang』という書籍も出版され、ハンモックキャンピングに関するギア&ティップスの成果がまとめられています。こうした流れを受けてハンモック熱が2015年頃から大手メーカーにも飛び火して、現在に至るのです。

geared ハンモック
アメリカでは湿気が多いエリアからハンモック人気が本格化。

ハンモックに注目が集まってきた原因のひとつとしては、アメリカ東海岸におけるダニによるライム病の拡散も関係しています。

ダニ対策のためには、寝床を地面から離して眠ったほうがいい。そのため、東海岸のアパラチアン・トレイルでは、テントやタープではなくハンモックを利用するスルーハイカーもめずらしくありません。

実際には、近年のアメリカを例に出すまでもなく、昔からハンモックは宿泊に適した実用的な道具でした。

パックラフトと同様に、ハンモックも軍用の放出品を使うところから始まっており、ジャングル戦で軍隊が使う道具としての歴史はもっと長いわけです。

中南米では生活の道具として、日々の睡眠にハンモックが使われています。決して雰囲気の道具ではなく、リアルな道具なのです。

日本の自然とハンモック

一方で、日本にはハンモックを日常生活において張る歴史や文化はありませんでした。アウトドアで使おうにも、「キャンプ場や森林限界を超えた山では張れないじゃないか」と疑問をもつ人も多いことでしょう。

しかし、冷静に日本の自然を眺めてみると、ハンモックにうってつけな条件が揃っています。

たしかに森林限界を超えるとハンモックは張れませんが、そもそも日本の山々は木々に囲まれた樹林帯のほうが圧倒的に広いわけです。

同時に傾斜が急で湿度が高く雨もふりやすいので、テントを張るのに適した水はけのいい平地は少ない。こうした条件はテントよりもハンモックに適しています。

むろん、幕営指定地の問題など法令上の制限もありますが、こと自然条件に関してはハンモックと日本の地理との親和性は高いのです。

また、ハンモックだと地面を整地する必要がなく、環境負荷が少ないところも見逃せません。

「固定点となる木が傷むのでは?」と心配する人もいるかもしれませんが、平らなテープをツリーストラップとして使う限り、ダメージはほとんど生じません。

それでも木への負担が気になるならば、カットした薄手のスリーピングパッドやウレタンマットを養生として使用すれば、何ら問題はないでしょう。

このように、自然環境に人の痕跡を極力のこさずに野営をする「Leave No Trace」の思想を、最も実践しやすい道具がハンモックなのです。

geared ハンモック

ただ、日本だとこうした理解がまだまだ広まっていません。そこで現状を変えていくためには、とにかくハンモックを体験してもらうしかないと考えています。

そのなかで最初にとりあげるべきは、ハンモックギア全般を総合的に展開している専門メーカーの eno(eagle nest outfitters) でしょう。

王道メーカー eno の二人用モデルを試そう

eno のラインナップだと、Hiker’s Depot でも取り扱っているウルトラライトな一人用モデル Sub7 も興味深いのですが、ハンモックキャンピングの王道を知るという意味では「DoubleNest」と呼ばれる二人用の大きめモデルも無視できません。

UL志向でソロ使用を想定すると「二人分のスペースは余計なのでは?」と思われるでしょう。

しかし、ハンモックでも寝床の広さは寝心地に直結します。テントを選ぶ場合を考えてみてください。

ストイックなUL系ショップでは、シェルターをすすめる際に「一人用で充分」と言われるかもしれませんが、一般的なアウトドアショップでは「一人で二人用を使うと広くて使いやすいですよ」としばしば提案されるはず。

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自然に溶け込むスタンダードなものから街中の公園でも映えるポップなものまで、豊富なカラーバリエーションも魅力。

日本だと、Hummingbird Hammock の登場以降、ウルトラライト志向の人たちがハンモックに手をのばすようになりました。

ところが、Hummingbird や eno の一人用モデルは、あくまで軽さを追求したものなので、使ってみてあまり寝心地がよくないと感じるユーザーもいたかもしれません。

そんな方は、ぜひUL目線にこだわらずに、ハンモックの楽しさや寝心地や安定性を総合的に体感できる DoubleNest を試してみてください。

そうした点で、このモデルには先ほどいった「ハンモックキャンピングの王道」という表現が当てはまるのです。

実際、eno はカタログのトップに DoubleNest を掲載しています。同社が「Leave No Trace」の普及やアパラチアン・トレイルや、パシフィック・クレスト・トレイルなどの保全のために展開しているドネーション・モデルも、やはり DoubleNest です。

「ダブルサイズこそハンモックの王道なんだ、まずはここを見てほしい」というメーカーの主張を感じずにはいられません。

ここから入っていけば、eno の道具だけでシステムを完結させることもできます。フライやツリーストラップの種類も豊富で、ハンモック用の寝袋も揃っています。

eno の商品群を見れば、ハンモック周辺の道具の多様性がよくわかるので、この世界の奥深さを知るにもうってつけのブランドです。

製品名     : DoubleNest Hammock
メーカー    : eno
重量      : 538g
価格      : ¥9,500(税込)
お問い合わせ  : SUNWEST
購入      : SUNWEST ONLINE STORE、各取扱店

Hummingbird の製品群にみるハンモックギア軽量化のポイント

geared ハンモック

ハンモックのシステムを軽くする際には、本体よりも周辺のギアに力点を置くことをおすすめします。

先週ご紹介したように、寝心地を優先するならハンモック本体はある程度の大きさのものを選択するのもありです。その代わりに周辺の道具を軽くすれば、快適さをあまり損なわずにシステム全体を軽量化できます。

※geared編集部注: 本稿は、Hiker’s Depot 店主の土屋智哉さんと、同店きってのハンモック通である二宮勇太郎さんの談話をもとに、geared編集部が文章化しています。

その際にポイントとなるツリーストラップとハンモック用タープの動向を、日本のUL志向な人たちのあいだでハンモックを広めるきっかけになった、Hummingbird Hammocks の商品を例にとって追いかけてみましょう。

Hummingbird 製ツリーストラップのゆるぎない軽さ

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世界最軽量のハンモックを自称しているだけあって、Hummingbird のハンモック本体の軽量性やパッキングサイズの小ささは魅力的です。しかし、このメーカーで最も特筆すべきはツリーストラップでしょう。

従来のハンモックでは、いくら本体を軽くしても、ストラップの重さやパッキングサイズの大きさがネックになっていました。

それを大幅に改善したのが、Hummingbird のストラップにも採用されているウーピースリングという技術でした。

ウーピースリングは造園業に由来する技術です。木をまとめて運ぶ際に、ロープの先端をロープの中空に入れてループをつくり、引っ張ると摩擦で固定される。

興味深いことに、近年のハンモック界の動向をまとめた書籍『The Ultimate Hang』の裏表紙にも、ウーピースリングのイラストが使われています。これをどのメーカーが最初に製品化したのかはよく分からないものの、そのぐらい画期的な変化でした。

ハンモックではメタルパーツを使って固定するシステムが主流なので、金属を必要としないウーピースリングは大幅な軽量化と微妙な調整を可能にしました。

その後もさまざまなシステムが試行錯誤されていますが、これほどライン自体を軽くシンプルにする方法は見つかっていません。

geared で最初に Hummingbird Hammocks を紹介した以後、現在では eno をはじめ他のメーカーもウーピースリングを使ったツリーストラップを発売していますが、これを日本でも広めた Hummingbird のモデルが今なお最軽量です。

ハンモック用タープ最軽量クラスの Heron Rain Tarp

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Hummingbird の Heron というハンモック用タープも、異常なぐらい軽いです。ハンモック用にデザインされた六角形の特殊な形状で、メーカー公称の有効面積は243cm×320cm、重量が243g。

このサイズのタープだと、一昔前だったら400gを超えていても軽いぐらいでした。

たとえば、ウルトラライト文化の継承にこだわった Trail Bum の CTタープでも、200cm×280cmで303gです。それよりも軽くて有効面積が大きいのは、すごいことです。

タープとしての汎用性に優れた他社の制品は他にもありますが、ハンモックと併用することだけを考えて有効面積と重量を比較した際に、Heron は現状出ているタープのなかで最もアドバンテージが高いモデルだといえるでしょう。

ちなみに、ハンモック泊はタープ入門にもぴったりです。ULハイキングで定番のタープとシートを組み合わせた野営方法は、慣れない人にはやや心もとなく、「そんなのできないよ……」と敬遠されがちです。

でも、ハンモックとタープで眠ると意外なほどに快適で、きちんと満たされている感覚が得られます。

コストを考えても、ハンモック泊に必要な道具を一式揃えるのと、テントをひとつ買うのとでは、それほど変わらないです。

しかも、ハンモックやタープは、テントのようにもっぱら宿泊用というわけではなく、それぞれ単体でもさまざまな場面で使えます。

タープを使った開放感あるアウトドアライフの導入としても、ぜひハンモックとの組み合わせを試してほしいです。

このシステムは、雨天時に汚れる道具があまり出ないのも特長です。たとえば雨の日に食事をとるとき、ハンモックとタープの組み合わせなら、濡れた地面に座っておしりが湿ることもありません。

濡れるのはタープだけなので、はたいて水気を落としちゃえばすぐに収納できる。家に帰ってから汚れたグラウンドシートを洗う手間も省けるので、よりスマートにアウトドアを楽しめます。

製品名1    : Tree Straps
重量     : 160g
価格1     : ¥5,400(税別)
製品名2    : Heron Rain Tarp
重量     : 2243g
価格2     : ¥24,000(税別)
メーカー   : Hummingbird Hammocks
お問い合わせ : Outdoor Gear Maniacs

curator/土屋 智哉

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Source: CAMP HACK

わずか20分でソールドアウトした「ハイカーサコッシュ」を超ロングレビュー!

Rawlow Mountain Works の Tabitibi Tote。そのカメラバッグとしての可能性を探る

geared サコッシュ

筆者は、かつてgearedで日本のハイカーサコッシュの歴史を綴ったこともある自称「サコッシュ評論家」なのですが、久々に見逃せないハイカーサコッシュが登場しました。

昨年も多くのメーカーが登場した日本のコテージインダストリー(ガレージメーカー)シーンですが、なかでも大きなインパクトを残したのが、gearedでも紹介した Rawlow Mountain Works でしょう。

その要因としては周到なイメージ&ビジュアル戦略、各地でのポップアップショップや受注会を通じての精力的な販売戦略はもちろんですが、なんといってもプロダクトを一見して感じる強烈なオリジナリティと気の利いたギミックの数々、そして細部までこだわった完成度の高さにあることはまちがいありません。

なかでも、昨年の取材時は最終試作の段階だった Tabitibi Tote と名付けられたハイカーサコッシュには個人的にビビビときました。そして自称「サコッシュ評論家」として、直ぐさまこう思ったのです。

「こりゃ 山と道 サコッシュ 以来の大ヒットになんぞ!」

geared サコッシュ
シンプルな作りながらギミックを満載している Tabitibi Tote。

そしてその予想は見事的中し、昨秋ついに販売を開始した Tabitibi Tote は Rawlow Mountain Works のオンラインショップでわずか20分でソールドアウトしてしまったとか。

ともあれ、発売から5年以上を経た今も売れ続けているモンスター、山と道サコッシュに比類する存在になるかは未知数ですが、コーデュラナイロン風の生地を使ったULに振り過ぎていないルックスといい、小さな本体に満載したギミックといい、魅力的なカラーバリエーションといい、いまやULシーンを超えた人気を獲得している 山と道サコッシュ に比類する存在になるポテンシャルは充分にあると「サコッシュ評論家」は見ています。

前置きがかなーり長くなりましたが、今回はそんな大人気の Tabitibi Tote を Rawlow Mountain Works のご好意でお借りすることができましたので、実際に使い倒してのレビューを書いてみたいと思います。

前置きも長かったですが、実はここから始まるレビューもかなーり長いです。ですが、ぜひ最後までお付き合い頂けたら幸いです!

Tabitibi Toteをカメラバッグとして使い倒してみた

geared サコッシュ
シンプルな一気室をスナップボタンで留める方式。ストラップは取り外し可能。

……が、まずここで皆様に告白しておくべきことがあります。自称「サコッシュ評論家」を名乗りながら、実は筆者は普段のハイキングでまったくハイカーサコッシュを使わないのです!

なぜなら、こんなギア関連の文章を長々と綴りながらも筆者の本業はカメラマン。腐ってもカメラマンとしては山に行くときはそれなりのカメラを持って行きます。

具体的にはフルサイズの一眼レフカメラなのですが、そのため胸のあたりにはいつもカメラを入れたカメラバッグがどーんと鎮座されていらっしゃいますので、ハイカーサコッシュが入り込む余地がまったくないのです。

そんなエセ「サコッシュ評論家」が Tabitibi Tote にはビビビと来た理由は、その名前の由来にもなっているギミックにありました。

なんとこの Tabitibi Tote、マジックテープで止められた底部がガバッと開き、小さなトートバッグ状に変貌するのです。

トートバッグに変貌した際の本体の厚みがあれば、フルサイズの一眼レフも入るのではないか? エセ評論家を脱するチャンス!

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ベルクロで留めた底部を解放するとマチ幅が2cmから14cmに広がる。
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ダイニーマ生地の天マチを伸ばすとさらに容量がアップする。

これまで、カメラバッグには Paago Works の Focus をたすき掛けにして愛用していました。

さすが Paago Works らしく細部まで使い勝手を追求した Focus は他社の追従を許さぬほどの完成度で、普段の山行や山での撮影時はもちろん、街でも愛用し倒していたのですが、PVCコーティングされた本体生地の肉厚な素材感もあり、UL的観点では少々嵩張ると思うことが多かったのも事実。

もちろん、カメラバッグである以上は衝撃吸収性やある程度の耐水性は必要な機能なのでそのぶん嵩張るのは仕方がないし、Focus が万人に全力でオススメしたい一品ではあることはまちがいないのですが、衝撃吸収性などをある程度犠牲にしても自己責任においてもっと軽快に使えるカメラバッグはないのかしらとずっと思っていたのです。それが日本のコテージインダスリーからここまでイケてるルックスで登場したのだから、手を出さないわけにはいきません(Tabitibi Tote はカメラバッグではありませんが)。

ともあれ、Tabitibi Tote が14cmまでマチが広がるとはいえフルサイズの一眼レフにはさすがに小さいのではないかと思う方も多いかと思いますが、自分はほぼ軽量でコンパクトな単焦点のレンズしか使わないし、とくにプライベートの山行では非常に薄いパンケーキレンズ1本なことがほとんどなので、それならば充分と見込んだのです。

結果はビンゴで、さらに標準~広角の単焦点レンズなら緩衝材入りのポーチに入れた状態でもう一本仕舞える余裕がありました。

geared サコッシュ
ポーチに入れたEF50mm F1.4 USMを入れてもこのように収納が可能。
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サブカメラのEOS 5D Mark2にEF40mm F2.8 STMを装着した状態。ご覧の通り充分入る大きさ。

年明け早々、雪の八ヶ岳を1泊2日で縦走する計画があったので、早速 Tabitibi Tote のカメラバッグとしての実力を試してみることにしました。

この時はさるメーカーの製品を物撮りする予定もあったので、EOS 5D Mark4にいつものEF40mm F2.8 STMを装着した状態を基本に、もう1本EF50mm F1.4 USMも Tabitibi Tote に入れて持っていきました。

結論としては、当たり前ですがカメラバッグとして作られた Paago Works の Focus と比べると使い勝手は一歩も二歩も譲りました(Focus はカメラバッグとして相当の高みにあるので、それと比べるのも可哀想なのですが)。

カメラバッグとして考えたとき、まず気になったのは、本体上部に取り付けられたハンドルがあることで、カメラをさっと取り出しにくいこと。まあ0.5秒くらいの差だと思うので、アウトドア雑誌で山行記事の撮影をするカメラマンでもなければ大した問題ではないし、気になる人はハンドルを切り取ってしまっても良いかもしれません。

同じく開口部が身につけると体に沿って自然と閉じる構造なので、この点もカメラの取り出しやすさという意味では少々ストレスを感じる場面もありました。

ストラップが一眼レフのような重いものを入れるにしては細めなので肩に食い込むのではと思っていましたが、冬季なのでウェアを着込んでいたせいかまったく気になりませんでした。が、薄着になる季節にどう感じるかは不明です。

geared サコッシュ
カメラを出し入れするときはコキを緩めてストラップを長くするとやりやすい。

ともあれ、この軽量さとシンプルさは自分にとっては他に得難い魅力があることも事実でした。身軽だし、バックパックにカメラをしまう時も入れやすく出しやすい。

山行取材の撮影ならば、やはり速写性に優れた使い勝手の良い Paago Works の Focus を選ぶでしょう。ですが、プライベートの山行では Tabitibi Tote を選ぶ場合も大いにあると思います。それに、筆者のような使い方はかなり特殊な例でしょう。

たとえばコンパクトなミラーレス一眼のようなカメラを使っていて、山行時に裸で持つのは怖いけど大げさなカメラバッグに入れるのは気恥ずかしいし、だいいちデザイン的に欲しいカメラバッグがまったくない、という人は結構多いのでは? そんな人にとっては、Tabitibi Tote は福音のような存在になり得るのではないでしょうか。

カメラバッグとしてのレビューばかり書き綴ってきましたが、Tabitibi Tote はそれ以外のシーンでも実に使えるバッグです。

ハイカーサコッシュとしても容量が増えることで山帰りにおみやげを入れるスペースを確保できたり(山男ならば家族、特に妻へのおみやげは非常に重要であることをご理解いただけるかと思います)、普段使いでもたとえば自分の場合は子供と遊びに出かけるとき(一応二児の父です)、オムツとお尻ふきだけを入れて身軽に公園に出かけて、帰りにパンでも買っていこうかなんてとき、容量が増えるのでとても助かります(例が所帯染みていてすみません)。

geared サコッシュ
こんな格好の女性にも自然に馴染みます。でもってお洒落。

それにやはり何よりこのルックスですよね。コットンやウールの服にもよく馴染んで、持っているだけでちょっとお洒落に見えてしまうハイカーサコッシュなんて、そうそうあるものではありません。

いやはや、「ベーベーポーチ」から始まったハイカーサコッシュも(詳しくは「ハイカーサコッシュまとめ」記事をご参照ください)、思えば遠くに来たもんだ……。

……と、こんなところでレビューを締めくくろうとしていたところに、Rawlow Mountain Worrks さんから思いもよらぬ報らせが舞い込んできました。

なんと、実は現在 Tabitibi Tote のオプションとしてカメラ用ハウジングを製作中とのことで、しかも試作中のそれをテストさせてくださるとのこと!

さらにハイブリッドキューベン素材の Tabitibi Tote もお貸しいただきました。

無骨なカッコ良さと耐水性UP! ハイブリッドキューベン版

geared サコッシュ
どーん。キューベン Tabitibi Tote。カ、カッコ良すぎる…。

先ほどから「お洒落」を連発してきた筆者ですが、Rawlow Mountain Works についてたったひとつの不満が実はそこでした。

そう、Rawlow はムサい40過ぎのオヤジにはお洒落過ぎるのです! こんなお洒落なモンに合わせる服もセンスも持っていねえ!

そんな全国のオヤジ&ボーイズの叫びを知ってか知らぬか、素材にUL系のコテージインダストリー界隈で人気の防水性と軽量性の高いハイブリッドキューベンを採用してくるとは、完全に心を撃ち抜かれました。

無骨なキューベン素材になったことにより男らしさが50%ほどアップし、クローゼットにアウトドアウェアしかない筆者のような人間も気負わず持てるようになりました。

ハイブリッドキューベンになったことにより耐水性が上がり(シーム処理はされていないので完全防水ではないと思われます)カメラバッグとして使う際も信頼感が増し、通常版約125g→約80g(筆者による実測値)と約45g軽量化されたことで素材と機能性でしかものの良し悪しがわからないスペック厨も納得の仕上がり。

ギミックも楽しいカメラ用ハウジング

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試作版のカメラ用ハウジング。中央の間仕切りは取り外し可能で製品版はグレー系の色になるとか。
geared サコッシュ
ハウジングはこのように折りたたむことが可能で、製品版にはナイロン製専用袋と付け替え用の30mm幅広ストラップのセットになる。

そして筆者としては非常に気になるカメラ用ハウジング。

まだ試作段階で生地の色は製品版とは異なるそうですが、装着しても重さの面でも取り回しの面でもまったく違和感がなく、バッグ本体にコシが出るためハウジングのない状態の時に気になっていたカメラの出し入れのしやすさも圧倒的に向上しているように感じました。

さらにこのハウジングにも実に Rawlow らしいギミックが搭載されていて、製品版に付属するナイロン製の専用袋に折りたたんだ状態で入れるとミニ座布団になるのだとか(笑)。

さらに専用袋にはバックルも付いていて、ストラップを付ければ簡易サコッシュにもなるといいます。まったく、よくもそんなこと考えるわ!

さらにさらに、カメラなど重い荷物を入れた際も肩に食い込みにくい30mm幅のストラップとセットにしてカメラキットとして発売予定とのことで、筆者のような人間のために作られたとしか思えません。

発売を翹首して正座待機したいと思います。

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ハウジングをセットしてEOS5D Mark2+EF50mm F1.4 USMを入れた状態。ご覧の通りピッタリ収まり、使い勝手も格段に向上。
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さらにEOS5D Mark2に標準ズームレンズのEF24mm~105mm F4 IS USMを装着した状態でもピッタリ収まったが、大きすぎて出し入れがしにくく、使い勝手は良くなかった。標準ズームレンズを装着した大抵の中級フルサイズ~APS-Cの一眼レフが収納可能だろう。

ハイブリッドキューベン素材とハウジングを手に入れたことにより、カメラバッグとしても完璧に近い状態になった Tabitibi Tote。

しかもそれをとてもシンプルな構造で成し遂げている点が素晴らしいです。ほんと、筆者はこのくらいシンプルなカメラバッグがずーっと欲しかった! そして同じようなことを考えている人は、実は結構多いのでは?

製品名1   : Tabitibi Tote
価格1    : ¥6,500(税別)
製品名2   : Tabitibi tote カメラハウジングキット
価格2    : 未定
製品名3   : Tabitibi Tote Hybrid Cuben Fiber Edition
価格3    : ¥9,000(税別)
メーカ     : Rawlow Mountain Works

curator/三田 正明

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バックパックが自作できるキット!?実際に作ってみた様子をレポート

Great Cossy Mountainが自作バックパック・キットをリリース!

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以前、〈Off The Grid〉のアフターレポートでもチラリと紹介しましたが、UL系国産コテージメーカーの Great Cossy Mountain が、バックパックの自作キットをリリースしました(2017年6月初旬では展示販売会での受注販売のみ)。

ともあれ、多くの方が「バックパックの自作!? そんなこと素人にできるの?」と思われるかもしれません。そこで筆者(ミシン素人)が実験台となり、Great Cossy Mountain の工房に伺って主宰の大越智哉 a.k.a コッシーさんに御指導いただきながら実際に作ってみましたので、その模様をレポートさせていただきたいと思います。

〈Off The Grid〉のレポートでもお伝えしたように盛り上がりを続ける国産コテージメーカー・シーンですが、その中でも Great Cossy Mountain は「最左翼(最右翼?)」ともいえる存在です。

ULハイキングの道具はシンプルであればシンプルなほど是であるとされる傾向が強いですが、Great Cossy Mountain ほどシンプリシティに重きを置いたもの作りを行っているメーカーは、世界的にも希有ではないでしょうか。

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Great Cossy Mountain工房に佇む大越智哉 a.k.a.コッシーさん。体はおじさん、頭脳はシティボーイ。

たとえば、Great Cossy Mountain のバックパックは基本的に一枚布を封筒状に縫い合わせることでできあがっていますし、コッシルシェルターと名付けられたワンポールシェルターに至っては、一枚布を1ヶ所縫い合わせているだけ(もちろんポール受けやガイライン基部など細かい部分の縫製はしていますが)という度肝を抜かれるほどのシンプルさなのです。

それを単に「素朴」と感じる人もいるでしょう。ですが、縫製箇所が減ればそのぶん強度は上がりますし、軽量化にもなります。故障しても修理しやすく、シンプルな道具はトレイルでの行動や生活をよりシンプルにもしてくれます。

そして、そんな Great Cossy Mountain 最大の特徴であるシンプルさを最大限に生かす試みが、今回の POP HIKER Simple Pack “MYOG” Kit と名付けられたバックパックの自作キットなのです。

ULの伝統である自作バックパック

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POP HIKER Simple Pack “MYOG” Kit の内容物一覧

ともあれ、「バックパック」と「自作」という言葉に相容れないものを感じる人も多いかと思います。ですが、ULバックパックのオリジンである Ray=Way Backpack はキットのみで販売されていますし、もうひとつのオリジン、Gossamer Gear G4 もインストラクションがフリーダウンロードできます。

ULバックパックやタープといったULの基本的な道具は設計がシンプルなこともあり、ULカルチャーにおいてMYOG(Make Your Own Gear)と呼ばれるギアの自作は、トラディショナルなマナーのひとつでもあるのです。

しかも、POP HIKER Simple Pack “MYOG” Kit の設計は Ray=Way や G4 よりさらにシンプルですし、日本語で書かれた写真入りの説明書まで付属しています。

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写真入りインストラクションはかなり詳細。アウトドアギア縫製の基本を勉強するにも最適では。

Ray=Way を主宰するULハイキングの始祖、レイ・ジャーディンは自分でギアを自作する意義を、こう語っています。

「一般的に信じられていることとは反対ですが、店でギアを買う必要はありません。あなたは自分で作ることができます。そしてそうすれば、あなたは消費者心理から大きな自由を得て、それはあなたの人生に大きな変化をもたらします。(中略)ミシンを使うことは、車を運転するようなものです。自動だし、とても簡単です。(中略)だから先に進んで、古い考えから脱出してください。あなたのパラダイムを、それを購入するのではなく、自分のギアを作ってシフトしてください」(www.rayjadine.comより。筆者訳)

かつてこの文章を読んで鼻の穴を大きく広げた筆者は、早速 Ray=Way Backpack Kit を購入しました。が、英文で書かれた簡素な説明書と素材がゴロッと入った「キット」に尻込みし、そのまま数年間、箪笥の肥と化していることは言うまでもありません……。

だけど、コッシーのキットなら作れるはず! しかも本人の指導付きなら……と、この取材を口実に西千葉にある Great Cossy Mountain の工房に押しかけたわけです。

いざ制作!

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濁り目おじさん同士でこれから密室での共同作業が始まります……。

POP HIKER Simple Pack “MYOG” Kit は本体とショルダーハーネス用のPUコーティングナイロン生地と開口部用の薄手のナイロン生地、ショルダーハーネス用のメッシュ生地とパッドの心材と型紙、ストラップ用のテープとコード、各部のスライダーパーツ、インストラクションからなります。

分厚いインストラクションはステップごとに写真で解説されており、Ray=Way Backpack Kit とは雲泥の差。手順も非常に細かく説明されているため、基本的な縫製の知識のない初心者にもわかりやすそうです。

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切り出し作業は上質なカッターと広いカッター台、50cm以上の長い定規があると非常にはかどります。

作業はまずは切り出し作業から入ります。本体用生地を本体用とショルダーハーネス用に切り分け、テープ類も指定のサイズに切り出し、断面をライターで溶かして処理しておきます。

ショルダーハーネス生地を型紙に沿って切り出し、まずはチェストストラップとショルダーハーネスのバックル基部の縫い付けます。

これまで数回しかミシンに触ったことがないので初めはおっかなびっくりでしたが、コッシー先生のご指導もあり、それなりに形になってきました。

コッシー先生のミシンは定価8~9万円ほどのものだとのことですが、やはりそれなりに良いミシンの使いやすさを実感。厚手のポリプロピレン製テープが何重かに重なってもサクサク縫えます。

メッシュ生地と縫い合わせ、不要な部分をカットし、中にパッドを差し込むとちゃんとショルダーハーネスの形になりました。さっきまで単なる生地とテープだったものが立体的な「モノ」になったことに、ちょっと感動! ここまでの所要時間は2時間ほどでした。

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メッシュとナイロン生地を縫い合わせるショルダーハーネスの縫製はズレやすいので、これでもかというくらいマチ針で留めておくことがコツ。
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苦闘2時間、ショルダーハーネスが完成。さっきまで単なる布とテープだったものが立体物になってちょっと感動!
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荷重のもっともかかるショルダーハーネスは幾重にも縫いつける。ポイントを押せてくれるコッシー先生。
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いよいよバックパックらしくなってきた!

続いて袋部分の縫製に入ったのですが、一枚布で作られた「ただの封筒型」の Great Cossy Mountain のバックパックのシンプルな基本設計にも、実は様々な工夫が入っていることを実感させられる行程でした。

まずは開口部のバックルの基部となるストラップとショルダーハーネスを縫い付けるのですが、本体生地を巧みに織り込みながら幾重にも補強をかけて縫い付けていきます。このあたりは数々の試作と失敗を繰り返しながら辿り着いた設計だとか。とくに面白かったのは、ショルダーハーネスを取り付けるボトム部の作り方。

折り紙のような要領で平面だったボトム部が立体になりさらにそこがショルダーハーネスの基部となる作りは非常に頑丈ですし、荷重バランス的にもボトムとショルダーハーネスが直結した作りは良好なはずで、それをシンプルな方法で達成している作りに改めて唸らされました。

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Beatlesの『Let it Be』を聴きながらラストスパートをかけます。

ここで筆者は一捻り加えたくなり、POP HIKER Simple Pack “MYOG” Kit には本来ついていないバンジーコードの取り付け基部をつけることにしました。

コッシー先生は「そんなものいらん!」と言っておられましたが、やっぱりトレッキングポールとか傘とか外付けできる方が便利じゃないですか? シブシブ基部の取り付け方を教えてくれたコッシー大先生、あざーす!

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丸一日かけてついに完成! 愛い奴じゃ!

そんなこんなで朝10時から作業を始め、途中で何度か休憩を挟みつつ正味7時間ほど。ついに、ついに筆者初めての自作バックパックが完成しました。

背負ってみると、コッシー先生設計なのだから当たり前ですが自分で作ったとは思えないほど良好な背負い心地! 縫製もご指導の甲斐あってか遠目にはまったく問題なし! 強度的には、これから使っていく中でその答えが出るのでしょうが……。

ですが、なによりも筆者が特筆したいことは、やはり自分で縫ったバックパックはとてもとても可愛いということです。作っている途中から、もはや自分の子供のような気分でした。

自分で手を動かすことでしか得られない感慨

自作キットと聞いて、「なんで自分で作らなきゃならないんだ」と思う人もいると思います。実際、今回はコッシー先生から直接指導をいただいたので7時間ほどで出来ましたが、もしもひとりなら倍以上の時間がかかったかもしれません。

ミシン、定規、待ち針、手芸用クリップ、糸切りはさみ、カッター、カッター台など、制作に必要な道具も多いです(必ずしもすべて必要なわけではありません)。

それでも、自分で手を動かすことでしか得られない感慨をたっぷり得られる POP HIKER Simple Pack “MYOG” Kit に、筆者は価格以上の価値を感じました。

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バンジーコードを取り付けてみた図。本体色は赤、緑、グレーから選べる。本体素材はPUコーティングナイロンで、適度な厚みで縫いやすい素材。
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折り紙のように折って作るボトム。シンプルながら荷重バランスも良好。
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縫製が地味に大変だった開口部。バックパックの容量は35 Lほど。
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GCMのゆるキャラ、ガサゴソ君の他、鹿ちゃんロゴパッチも付属。もちろんパッチはつけてもつけなくても可。

「作る手間や時間、材料代を考えたら、完成品を買ったほうが絶対に安いんですよ。でも、自分で作ることによって道具への理解も深まるし愛着も湧く。大袈裟に言えば大量生産・大量消費へのアンチテーゼみたいな側面もないことはないですけど、もの作りの裏側を知ることって面白いし楽しいし、逆に既製品の良さも別の角度から見えてくる。モノや社会を見るときの視点が増えるというか、それは既製品を10個買っても見えてこないものなんだと思うんです。でも、単純に、僕自身が始めて自分で作った道具でハイキングに行ったとき、すごく楽しかったんですね。その経験をみんなに味わって欲しいんです」

と、語ってくれたコッシー先生。これからもキット化をどんどん進めていく方針だそうです。筆者個人としても、Great Cossy Mountain がいつの日 かキット販売がメインのメーカーになったとしたら、最高にカッコ良いと思います。

この大量消費の世の中において、モノを売るのではなく、アイデアと経験と知識と体験を売るメーカーがあるとしたら、それこそ未来的だとは思いませんか?

「だから先に進んで、古い考えから脱出してください。あなたのパラダイムを、それを購入するのではなく、自分のギアを作ってシフトしてください」

製品名  : POP HIKER Simple Pack “MYOG” Kit
価格   : ¥10,000(税別)
メーカー : Great Cossy Mountain

curator/三田 正明

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Source: CAMP HACK

ポンチョ、寝袋、ブランケットと3Wayに使えるSestrals Poncho

三兎を追うもの三兎を得る!?As Tucas の Sestrals Poncho

Sestrals Poncho

久々に「ウルトラライトハイキング(UL)臭」がプンプン漂うアイテムの登場です。

スリーピングパッドにバックパックのフレームとしての役割を担わせたり、トレッキングポールをタープやシェルターのポールに使ったり、ひとつのアイテムにふたつ以上の役割を担わすことは、ウルトラライトハイキングの基本的な軽量化メソッドのひとつ。

そしてレインポンチョがタープにもなる Integral Designs の Sill Poncho や、同じくレインポンチョがワンポールシェルターにもなる Six Moon Designs の Gatewood Cape など、ULの名品と呼ばれるアイテムにはひとつでふたつ以上の役割を持ったアイテムが多いのですが、ポンチョ、キルト(背面とフードのない寝袋)、ブランケットと3種類の機能をひとつで果たせるこの As Tucas の Sestrals Poncho も、その系譜に連なるアイテムと言えます。

化繊ダウンを使った「着れる寝袋」

重量700gの寝袋で眠るのと、400gの寝袋に300gのダウンジャケットを着て眠るのでは、同じ700gのインサーレンション重量とはいえ確実に700gの寝袋の方が暖かく眠れます。

なので、軽量化のためどちらかのインサレーション量を重視するならば寝袋を、というのがセオリーと言われています。

ともあれ、キャンプに着いたらお酒を飲んだり、友人とおしゃべりする時間が欲しいと思うのも人情(筆者は特にそうしたい派です)。そんな時間に震えて過ごすのも嫌だ……。ならばせっかくの寝袋を就寝時にしか使わないのはもったいない。

寝袋を体に巻きつけて過ごせばいいではないか、というのもULハイカーのテクニックのひとつなのですが、やはりキャンプ時はダウンジャケットの方が暖かく気楽に過ごせるのも事実。ならば……というわけで登場してきたのが、この「着れる寝袋」Sestrals Poncho というわけです。

Sestrals Poncho
背面のないキルト状。中に入った状態でのスナップボタンの開閉はとてもしやすかった。

もっとも、「着れる寝袋」は As Tucas 独自のアイデアではありません。Jacks ‘R’ Better というアメリカのコテージメーカーはポンチョとして着れるダウンキルトを昔から作り続けていますし、gearedでもお馴染み土屋智哉さん率いる Hiker’s Depot も Flap Wrap UDD というポンチョとして着れてハーフバッグ的な使い方もできるユニークなダウン製ブランケットを作っています。

それらとこの Sestrals Poncho の最大の違いは、中綿にClimashieldという化繊ダウンを採用していること。

Sestrals Poncho
全開にするとブランケットになる。

正直、重量比でのロフト感=暖かさは、化繊ダウンは天然ダウンに適いません。ですが、濡れてしまっても一定の暖かさを維持することやメンテナンスの容易さ(=気軽に洗濯できる)など化繊ダウンならではの長所もあり、その長所が生きてくる場面も多々あります。

踏破に数ヶ月を要するロングディスタンストレイルではゼロデイ(休息日)に寝袋を気軽に洗濯できることは非常に助かるでしょうし、多雨多湿な季節や地域を旅するときも濡れに強いシンセティックダウンは非常に心強い存在です。

同様に、冬山でスリーシーズン用の天然ダウンの寝袋をインナーに、濡れに強い化繊ダウンのキルトや寝袋をアウターとして二重に使うのも理に適った方法論でしょう。

そんなわけで、筆者もかねがね化繊ダウンの寝袋がひとつ欲しいと思っていたのですが、それを抜きにしても、Sestrals Poncho にはかなりビビビと来てしまいました。

その理由としては、まず前述した通り、ポンチョとして着れること。インサレーションとしてダウンジャケットを持たずに良くなればそれだけで200~400g程度は軽量化できますし、就寝時にしか使用しない寝袋とキャンプ時にしか着用しないダウンジャケットをひとつにできたら装備としてもスマートです。

また、キャンプ時に積極的に着用することを考えると、Jacks ‘R’ Better のように天然ダウンの「着れる寝袋」より化繊ダウンの Sestrals Poncho の方が手荒に使えて洗濯もしやすいことはアドバンテージになりますよね。

そして何よりそのルックス。ゼロ年代の北米のULコテージメーカーのように機能性以外まったく考えてない無骨なデザインに逆に色気を感じてしまう筆者のような人間は、あまり多くはないかもしれませんが……。

3月頭の谷川岳をハイキングする予定があったので、As Tucas の日本でのディストリビューションを手がける アウトドアギアマニアックスさんにお借りしてテストをさせていただきました。その結果をレポートしたいと思います。

豊かなロフト感と暖かさ

Sestrals Poncho
足元はスナップボタンとドローコードで閉める。

まず、現物を手に取ってみて最初に感じたことは、ロフト感の良さ。正直、化繊ダウンは天然ダウンと比べるとロフト感がイマイチなのですが、その先入観を翻すリッチなロフト感がありました。

お借りしたのは Cilmashield APEX167 を採用したMサイズ605gのモデルだったのですが、メーカー発表値としては0℃対応とのことで、同重量の天然ダウン寝袋と同程度の温度域に対応していることは特筆すべき点ではないでしょうか。

天然ダウンにしろ、化繊ダウンによく使われる Primaloft にしろ、インサレーションの偏りを防ぐためにシェルに縫い目をつける必要があり、そこがコールドスポットになるのですが、Sestrals Poncho に採用された Climashield は素材自体に強度があるためシェルに縫い付ける必要がなく、それがロフト感の良さと暖かさに繋がっている気がしました。

シェル素材に採用された12デニールの Schoeller-FTCファブリックの肌触りの良さも特筆すべきレベルで、肌が弱いのでナイロンやポリエステルが体に触れるのは苦手な筆者でも、サラサラとした肌触りは快適でした。

Sestrals Poncho
特徴的な首回りのカッティング。

次にデザインを見ていきましょう。まず、Sestrals Poncho の大きな特徴として挙げられるのが、首元の扇状に弧を描いたカッティング。フードレスの寝袋やキルトではスナップボタンとドローコードなどで冷気を遮断するデザインが多いですが、それを Sestrals Poncho では扇状の首回りを首元にたぐり寄せるシンプルな方式を採用しています。Schoeller-FTCファブリックの肌触りと相まって、非常にリラックス感のある寝心地です。

Sestrals Poncho
こんな感じでヌックヌク。前身頃のスナップボタンのつけ方を間違えてました……。

足元はスナップボタンで留める方式で、スナップボタンを外してドローコードを全開すれば、ブランケットとしても使えます。背面のスナップボタンもキルトにくるまった状態からも着脱が容易で、シンプルながら使用にストレスの少ない考えられたデザインに感じました。

3月初旬の谷川岳の標高1,800mあたりで Mont-Bell の天然ダウン寝袋 Alpine Down Hagger#3(重量約550g、快適使用温度0℃)のトップキルトとして使用し、山と道Alpha Anorak と Mont-Bell UL Down Pants を着用して寝ましたが、深夜~明け方には氷点下-10℃以下まで下がったはずですが、朝までぐっすりと眠ることができました。

Sestrals Poncho
谷川岳での就寝時の様子。

また、この日は稜線上でキャンプしたのですが、幸運なことにほとんど風がなく、午後4時から夜の10時過ぎまでずっと外で宴会をしていました。そんな時はこのポンチョモードが大活躍。膝上辺りまですっぽり覆われるので、暖かさの安心感が違います。

また、Sestrals Poncho ならではの秀逸な点だと思ったのが首を出す穴。立ち襟が付いていて顎下までしっかり包まれるので、安心感がより高いのです。風が吹くと露出した手が冷えることは冷えるのですが、寒ければポンチョの中に突っ込んでおけばOK。

キルト時に足元と背面を開閉するためのスナップボタンがポンチョ時にも手を出すループになったり、体の前で止めれば腹部のインサレーションが倍になってより暖かく使えたりというシンプルながら秀逸なギミックもあるのですが、これは Jacks ‘R’ Better も先に採用しているアイデアなので、ここでは特筆しないでおきます。

Sestrals Poncho
ポンチョ時に首を出す穴。首元までしっかり暖かい。

長々と書き綴ってきてしまいました。まとめに入ります。まず、Sestrals Poncho の Climashield の化繊インサレーションはロフト感がよく、Schoeller-FTCファブリックの肌触りも抜群です。

ブランケットとして使用すれば旅行や夏山などでも活用できるし、今回のレポートのように雪山でトップキルトとしても使えるので、季節やシチュエーションを問わず幅広く活用できます。

キルトとはいえ超軽量とは言い難いですが、インサレーションジャケットを別途持たなくてもよいため、そのぶんの軽量化を図れます。

何よりも持って行くものを減らせて装備をよりシンプルにできることは、ULハイカーにとっては大きな魅力ではないでしょうか。

ひとつ問題を挙げるならば、ズバリ値段。正直、素材に使われた Climashield も Schoeller-FTCファブリックも高級素材のため、このいなたいルックスの割に少々、いやかなりお高いです。

ですが、Sestrals Poncho が唯一無二の魅力を持つプロダクトであることは間違いありません。うう、欲しいなあ。奥さんに相談だ!

curator/三田 正明

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Source: CAMP HACK

gearedセレクトの超軽量ギア。軽量化を目指すなら見逃せないアイテム特集!

ヘリテイジのドーム型ツェルト最進化形。クロスオーバー ドーム fは○○g

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ある種の信仰だと言われるかもしれませんが、ドーム型テントに安心感を覚える人は多いのではないでしょうか。

どの程度の風に耐えられるかといった実際の物理的強度も然ることながら、2本のクロスポールが形作る、足が4つの「お屋根」のかたちが心理的な安心感にも繋がっているような気がします。そして心理的な安心感は、山で夜を越える上で無視できない大事なファクターでしょう。

とは言え、ドーム型の山岳テントはソロ用の最軽量クラスのもので1.1~1.3kgくらい。十分軽いとも言えますが、ソロタープやツェルト[*1]、あるいはウルトラライトテントに比べると、やはり重く感じてしまいます。

*1: 非常用の簡易テント。積極的にこれを使って野営をする人もいる。

でも一方で、それらの超軽量な道具は、張り方にコツが必要だったり、風向きにセンシティブだったりという特性があります。サクっと張れて、自立して、心理的安心感もあって、なおかつ1kgを大きく切るような選択肢はないものか?

そんなわがままなニーズに答えてきた製品のひとつがヘリテイジのクロスオーバードームでしょう。2本のクロスポールで建てるシングルウォールの――つまりフライがない――ドーム型ツェルトというべき製品です。重量はソロ用山岳テントのなんと半分、700gしかありません。トレイルランナーやファストパッカーの間で口コミ的に広がったこのアイテムは、入荷するとすぐに売れてしまう人気製品でもあります。

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クロスオーバー ドーム f

そしてこのクロスオーバードームを、ひと回りサイズダウンすることでさらに小型軽量化したモデル、クロスオーバー ドーム f が2017年6月にリリースされました。

こちらの重量は570g。500mlのペットボトル飲料とちょうど同じぐらいです。縦75cm×横200cmのフロア寸法は、広いかと言われれば少々狭いでしょうけど、でもこの軽さでドーム型なのですから、それを充分補えるメリットがあると思います。

ツェルトの仲間ですから、15デニールといううすうすの素材で、最小限の防水性能(1,000mm/cm2)しかありません(縫い目はシールされてるそうです)。ポールもソロ用の軽量山岳テントより1mm程度細いものが使われています。となると活用シーンには気をつける必要がありますが、新しいアクティビティのイメージがムクムク広がる人はたくさんいるはずです。

いやあ、これは欲しいでしょう。

製品名  : クロスオーバー ドーム f
価格   : ¥33,000(税別)
メーカー : ヘリテイジ

curator/gearedエディター

手のひらサイズに収納できる24Lの超軽量ザック Sea to Sky

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米ポートランドのスタートアップ The PNW が開発した Sea to Sky はポケットサイズで携帯できるバックパック。

キャリーポーチに収納すると12.5cm×7.5cm程度ですが、広げれば24Lのコンパートメントを擁するパックになります。重量は約156g。かなり軽いです。

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上部の開口部をロールしてバックルで留める仕様で、フロントのジップポケットからも物を出し入れできます。左右に設けられた大き目のサイドポケットも重宝しそう。

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ファブリックは30Dのコーデュラナイロンを採用しており、メーカーは高い耐水性をアピールしています。ただ、ジップが止水加工されているとは言え、水没には耐えられないとのことなので、ドライバッグ的な用途には適さないでしょう。

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eショルダーストラップは内側がメッシュ地になっています。また、チェストストラップのバックルが非常時に使うホイッスルにもなるというギミックも。

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フロントジップはリフレクターとしても機能します。

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コーデュラならではの耐久性と防水性を備え、山小屋1泊くらいに応じる容量があり、超軽量で携帯できる――水辺のアクティビティにも問題なく使えるでしょうし、ミニマルなULザックを求める向きにも丁度良さそう。

より大きなバックパックに忍ばせておいて、テン場に着いてからサブのバッグとして使うのもいいのでは。あるいは、スーパーマーケットで買ったものを詰め込むエコバッグとしてなど、デイリーユースにもハマるでしょう。

バランスが良く、それゆえに汎用性が高いモデルだと思います。

Sea to Sky は Kickstarterでプレッジを募集中ですが、すでに目標額を突破し製品化が決定。日本への発送にも応じます。

製品名  : Sea to Sky
メーカー : The PNW
価格   : $59~(別途送料)

curator/gearedエディター

燃焼中の燃料補給ができる○○gのアルコールストーブ、TATO GEAR AB-13 の憎めない魅力

geared

TATO GEAR の AB-13 HYBRID STOVE は、メイド・イン・USAのおもしろいアルコールストーブです。

17gという軽さもさることながら、カーボンフェルトと燃料ボトルをシリコンのチューブでつないで燃焼中の燃料補給を可能にした、他にはないつくりが目を引きます。

※編集部注: 本稿は土屋智哉さんの談話をもとに、geared編集部が文章化しています。

従来のアルコールストーブは、燃焼中の炎が見えにくい上に、構造上いったん火を消してからじゃないと燃料の補給ができませんでした。扱いに慣れて、火力を見極めてどのぐらいの燃料が必要なのかを把握できるようになれば克服できるものの、こうした点がネックになって二の足を踏んでいた方もいらっしゃるでしょう。

でも、カーボンフェルトなら燃焼面が赤くなるので火加減が一目でわかりますし、炎の大きさも一定のところでキープされるのでコントロールしやすいです。テストしてみたところ、火力も大手メーカーのアルコールストーブに引けをとらない塩梅でした。

geared

なによりも、「アルコールストーブにこういう切り口があったのか!」と思わせてくれる造形に惹かれます。ギーク感があるというか、男の子が大好きなオモチャのような……。ULの道具ならではの、従来の山道具とは違うデザインのおもしろさを体現していると思います。

もともと日本のUL文化では、アルコールストーブの自作を主軸にして MYOG(Make Your Own Gear)の柔軟な発想が育まれてきました。世界を見わたしても、日本のアルコールストーブはかなり稀有な進化を遂げています。その傾向は2000年代頭から今に至るまで続き、高機能なアルコールストーブの開発はある程度いくつくところまでいった感があります。

たとえば、ここ数年は毛細管現象でアルコールを吸い上げて着火させ、本燃焼までのプレヒートの時間を短縮して燃費をよくし、さらに炎をサイクロン状に巻き起こして燃焼効率を向上させるモデルの開発が進んでいます。3Dプリンタを駆使した FINAL FLAME GEAR や、フライフィッシャー向けの RSR が作っている削りだしのモデルなどが代表例です。

また、FREELIGHT が昨年発表した BLAST BURNER は従来のアルコールストーブの燃焼システムから大きく飛躍し、まるでガソリンバーナーのような燃焼と高燃費を実現させた画期的なモデルとなっています。

これらの開発の背景として日本のアルコールバーナー界の鬼才である JSB さんの研究開発は無視できません。彼のアイディアや研究成果を、いろんな人が製品化までブラッシュアップしてきたといえるでしょう。その結果、最先端の低燃費・高効率のアルコールストーブは格段に進化してきたのです。

geared

……でも、個人的にはもっとバカっぽいものがあってもいいかな、と(笑)。技術的な洗練とは違った、道具としてのおもしろさがあってもいい。アルコールストーブって、そういう自由なものでしたから。

今の日本だと、自作しなくても買えるアルコールストーブの多くはアルミ缶を再利用したものが主流なので、この AB-13 のようにアルミ缶に頼らずいちから新しいかたちに挑戦したものをみると「おおっ!」と興奮してしまうのです。

もちろん、ただデザインが斬新なだけでなく、その設計がきちんと理に適っていて、初心者でも扱いやすいアルコールストーブになっています。

最先端のものと比べて「優れている」とは決して言えません。しかし、もともとウルトラライトの道具には、どこかいびつで足りない部分があって、それを「まあしょうがねえな」みたいな感覚で使うおもしろさもあるはずです。そんな遊び心を思い出させてくれる、茶目っ気のあるアルコールストーブです。

製品名  : AB-13 HYBRID STOVE
メーカー : TATO GEAR
重量   : 17g
価格   : ¥6,980(税別)
購入   : Hiker’s Depot

curator/土屋 智哉

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Source: CAMP HACK